「 新しいバンドを 」
「 俺の横でギターを弾いてくれないかな? 」 と彼は私に言った。
「 考えさせて欲しい 」 と私は答える。
何故って もうだめなんだよー 俺なにも弾けなくなっちゃったから。
指は動く。右手も動く。 でも心が全然動かないんだよ。
誰の音楽も私の心に響かない。それ以前に私の耳はもうかなりダメになってる。
何もセットされないままのCDプレイヤーの前で。
静寂の中で暮らしている私に、また彼は言う。
「 一緒にやりたいのは、お前となんだよ 」
.
彼=Kとは長い付き合いである。高校からの同級生で、軽音楽部の同期で
社会人となってからもずっと頻繁に会っては、夜通し「音楽」の話をする。
ずっと、ずっとそばにいてくれた親友だ。皆さんにもそんな友達はいるはず。
ただし。私とKは一緒にバンドをしたことがないのだ。
はじめて逢った高校時代にほんの数回一緒にやっただけ。
Kはとんでもなく上手いギタリストだ。彼の出す音を賞賛する人はいても
嫌いな人はまずいないだろう。プロとしても十分通用するギタリストだ。
ずっと昔からギターを触ってた私は、彼がぐんぐん腕前をあげていくにつれ
しょうじき相当の僻みをもっていたが、とうとう降参した。
「 あの音はKしか出せない 」
ならば私は私しか弾けないギターを弾こう。そう決めた若き時代。
あの頃の二人を知ってる人ならば「光と影のような対照的なギタリスト」と
思うかもしれないなあ。
だから二人は同じバンドを組むことはなかったわけだ。
お互いのスタイルを一つのバンドに融合させる腕前は、当時まだ無かったから。
Kのギターは常に私の憧れだった。今だってそうだ。
いつかあんな音色をだしてみたい。そう思ってる。
身体を心を壊している私を誘うKの気持ちはとても嬉しかった。
想像してみるととても楽しくなってきた。
『 ずっと相容れなかった二人の「 音 」をもし融合できたら・・・?』
.
そしてとうとう 私とKは数十年ぶりに同じバンドでやることとなった。
なにが起きるのか楽しみにしてください。
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